寒鯉やこんこんと湧く比良の水
重代の川端に吊るす冬菜かな
水仙や藤樹書院の式台に
小さくとも離れ座敷ぞ鼬跳ぶ
河童の民話あまたや毛皮敷く
冬萌や水分りの神おはす峰
行商の大風呂敷に寒づくり
大津絵の鬼さながらに追儺かな
恋猫や生水の郷の鯉浮き来
和箪笥の引手ことこと二月かな
淡雪や旅人となりて酌む地酒
奥比良の裾廻の笹の起きにけり
根開きや鯖街道の小買物
借りて来し花柄傘や座禅草
蠅の子やをみならの愚痴たらたらと
小さき花活けて杜氏の帰りけり
はなむけに生水もて炊く菜飯かな
板壁の映ゆる在所や沈丁花
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