第二十八回 わらべ賞作品
      選考 辻桃子 安部元気 佐藤明彦


 わらべ賞大賞作品  鯖街道  前川おとじ


寒鯉やこんこんと湧く比良の水

重代の川端(かばた)に吊るす冬菜かな

水仙や藤樹書院の式台に

小さくとも離れ座敷ぞ鼬跳ぶ

河童(かはたろ)の民話あまたや毛皮敷く

冬萌や水分りの神おはす峰

行商の大風呂敷に寒づくり

大津絵の鬼さながらに追儺かな

恋猫や生水(しやうず)の郷の鯉浮き来

和箪笥の引手ことこと二月かな

淡雪や旅人となりて酌む地酒

奥比良の裾廻の笹の起きにけり

根開きや鯖街道の小買物

借りて来し花柄傘や座禅草

蠅の子やをみならの愚痴たらたらと

小さき花活けて杜氏の帰りけり

はなむけに生水もて炊く菜飯かな

板壁の映ゆる在所や沈丁花


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