第二十六回 わらべ賞作品
      選考 辻桃子 安部元気 佐藤明彦


 わらべ賞大賞作品  実篤の蟇  西沢 爽


「新しき村」へ下りゆく朝曇

はやも草刈られて畦の長かりき

脇により日傘に畦をゆづりたる

梅の枝の低きにぶつけ夏帽子

木の暗に脚立の脚をぐとひろげ

馬穴より空け泥つきの二番草

青田ありソーラーパネルべたとあり

値札つく土用太郎の鶏糞よ

村民といふことばあり汗くさく

たかだかと五色の村旗風死せり

実篤の蟇空彦の青蛙

すぐそこに大愛堂や落し文

いまはもう鶏舎からつぽ昼寝時

幼稚園むかしありしと合歓の花

大暑かな梧桐の幹二夕岐れ

老鶯や古井戸のもう使はれず

実篤の硯小さき風通し

てんと虫炭焼窯は草中に

自転車の籠の麦稈帽子かな

村を出る踏切ひとつ茗荷の子


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