わらべ賞作品

第二十七回わらべ賞大賞  選考 辻桃子 安部元気 佐藤明彦




大賞   萬代橋  
             石井 みや

萬代橋西詰にあり露の句碑
水打つてあり軒燈(けんとう)にかき正と
つゆけしや摺足でゆく畳にて
簟ところどころがひんやりと
掛香や座敷に入ればなつかしく
高濱家ここに集ふや菊膾
秋灯に寄りて八人ひとつ卓
ときどきは風立て扇名残かな
父上を覚えてますと生身魂
月白の曇り硝子に松の影
かなかなや百年前の出窓に灯
階上は句謡会の間月上る
三階へみしりみしりと月の人
虚子みづほ並び坐るや扇置く
いざよひの月を蔵して大樹かな
どびろくや電燈に虫ぶつかり来
先代のままのご不浄ちちろ鳴く
宵闇や対岸の灯のゆれうごき
この町に知合ひ減りし金風忌
盆過ぎや流木ここに流れ着き


戻る

inserted by FC2 system