七月号
   土佐の小春       辻 桃子

    三月藤崎
はなやかに屋根雪落ちて春いまだ
窓枠にがたが来てゐる彼岸かな
水洟がつーと木の根の開きけり
(しうとめ)綸子(りんず)古りたる春袷

    四月十三日高知本山町
虎杖(いたどり)や右城暮石の墓参り
春子(はるこ)干し右城暮石の生家ここ
酸葉(すいば)噛み教育長とその夫人
土佐はもう夏やフラフのひるがへり
すかんぽや小浦を過ぎてまた小浦
ひるがほや潮引きたれば砂黒く
ひるがほやサーファー一人励みをる
ひるがほに脱げば水着のしたたりぬ
柳刃や土佐の小夏を切り分けて
まな板と炭用意良し初鰹
可杯(べくはい)やこの厚切りの初鰹
おツと言ひ男入りくる初鰹

    四月二十五日弘前観桜会
(ぜんまい)の鉄のやうなが出でにけり
馬場過ぎて亀の甲門や初桜
瘡蓋(かさぶた)のいつまで取れぬ観桜会
観桜の支那そばと海螺(つぶ)津軽そば
焼鳥の火のかげろひて花の下
焼鳥のたつぷり焦げて桜狩

  

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