二月号
   清盛       辻 桃子

    十一月四日神奈川句会・柿生
柿生(かきお)村ことしの柿のいまひとつ
この夏の暑さ嘆きて柿もげる
柿たわわとぼしかれども菊も咲き
柿売の()ひの一山買ひにけり
おまけとてまたひとつ捥ぎ柿売れる

    十一月七日立冬・俳友道信作包丁
立冬や土佐の刃物のぎらぎらと
大根を抱へれば地の重さかな
間柄なけれどおでん一つ鍋
金物に仕切られたるもおでん種
やうやくに捨てし手紙や火恋し
子の髪を固く切り下げ七五三

    十一月十七日広島
ほら章魚(たこ)が釣れたと上げて巌島
島の灯のみるみる点り雪来るか
船の灯は海にこぼれて冬ざるる
一塊や山ふところの冬灯
炉火焚くやぶだうの固きぶだうパン
枯木宿こぼさぬやうに汁運び










    十一月十八日「童子三十一周年大会」宮島
清盛はくわつと(みひら)き冬の潮
清盛の島や冬の藻まだ濡れて
干潟には松ぼつくりと鹿の糞

    国宝・平家納経
納経にはなびら散つて鹿の声
経の絵の女人うるはし冬の潮
納経の金箔重く日暮急
廻廊に海の冬日のいま沈む

    大会群読「平家物語」
冬の夜や群読は今「壇ノ浦」

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