三月号
   納め句座       辻 桃子

一茶忌や千葉にあまたの句友あり
味噌といて煙めきたり根深汁
爽波忌の西へ飛ぶ雲速かりし
猿酒まさに一壺(いっこ)といふべかり
その中のかぼちやの甘き夜食かな
柚子もいでをる独り言いうてをる
十二月八日の行火熱すぎし

        清観氏は毎朝座禅
早暁の荒星(ひし)と座禅堂

        元気氏は毎朝歩行
日の出でより歩きはじめて冬至かな
あかあかとまぶしけれども冬至の日
黄金(こがね)なる夕日の差して冬至かな
最明寺さまより黄いの柚子届く
冬日差し石に魂生まれけり
日のうすれ影のうすれて石の冬
手に顔に馬油(ばあゆ)塗つては年詰まる
畳屋に畳ざうりを売りて暮
行く年の電気毛布やここだけ熱ッ
雪囲符丁うすれてきたりけり
江ノ電を途中で降りて仕舞(しまひ)句座(くざ)
極楽寺吟行なるが(をさめ)句座(くざ)











兼題は湯舟・おでんや句座納
佳かつたり悪かつたりや終ひ句座
二重マルたくさんありて終ひ句座
薗部庚申(こうしん)の名乗りきこえて句座納
終ひ句座欠席投句なかりけり


        「童子」一月一日に届くよう頑張る
そ数へ日のされども眠る時間かな
年行くや足場の上にまだ一人
屏風立てさざなみ満てる(にお)の浜
冬萌になんの社中ぞ集まれる
老人は老人と来て冬の菊
その上は漢方医とや炉の主
冬の水つぶやきつつに湧き出せり
黒雲の湧くとも見えて冬の水
菓子あまた仏に供へ雪催
ストーブの()け荒庭のよかりけり
あんま機に礼を言うては十二月
歳晩や京劇笑ふやうに泣き


 
  
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