十月号 早よ来よ 辻 桃子 母がまた早よ来よと呼ぶ土用かな 老い母のけふ五歩あゆみ半夏生 どの殻の身も痩せ土用蜆かな 屋台出て素通りできぬ茄子買ふ冷汁やもう次の飯考へて 吊(つり)忍(しのぶ)いくつ涸らせしまた欲しき星祀り気らくなものに片おもひ 噴水の天の空気を濡らしけり 噴水の水の心棒透きとほる 噴水の柱なせしがふつと消え 噴水をあふぐやいつか顔濡れて 相原農業高校牛臭き風が吹くなり黍畑 のさばつてのさばつてもうトマトの木 農校の回廊造り葡萄棚 弁当は涼しき廊で農高生 JAZZと数珠聞きまちがへて蓮浮葉 あひにくの雨の一日の浮葉かな