八月号
   頼朝と政子       辻 桃子

セシウムがガーガーガーガー鳴り春子
パチンコ屋に軍艦マーチ春の果
板前の刈上げ青く夏立てり
小柱をたのめば海の暮れてきし
海すでに暮れて(しろがね)鰺料理

        五月七日千曲川福島宿
藤咲くや北国街道脇道の
塵取(ちりとり)にこんもり掃きて欅蘂
千曲川渡舟場ありし蓬生ふ
頼朝と政子も来しと蕗茂る
こごみ食ふ句の友みんな集りて
お茶うけはゆんべ煮ふくめたる蕗ぞ
まづ溝をさらふ田植にかからんに
すたれたる水口祀り()る婆よ
豆大き水口祀りのお強甘(こはあ)
田植寒田植布子を二枚着て
みてあれば田植機はもうあの角へ
早苗田を荒す野鴨の憎かりと

        秋田句会想望
穀雨なる大河渡りてマリア堂
この世には奇蹟あるらし蕗の雨

  









        五月二十九日日本現代詩歌文学館理事会
黄あやめにまじる紫あやめかな
吾も見る賢治の見たる鹿踊
鹿踊の笛を風呂敷包みより
飛石のまじはつてゐる苔青し

        山口青邨雑草園
緑さす畳の間より畳の間
山国の蚕虫なればまだ(わかく)
(はらわた)を絞れ絞れと揚雲雀
立ちどまる豌豆の花なつかしく
にはとりが今も恐くて豆の花
豌豆の咲きつつにもうたんと成り
つばくらの腹照りながらひるがへり
麦秋や眼に力ある印度人
ラムネラッパのみして宵宮らしきこと


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