四月号
嗚呼 辻 桃子
豆甘く膾酸つぱく千代の春
氷めくなますの氷頭のこりこりと
お雑煮やみちのくのものたつぷりと
津軽では
供へしは葉つこ実つこの飾りかな
宝船敷いて枕を叩きもし
金の財布銀の財布や買始
初買のポケット多き財布かな
長子もう少年らしく歌留多取
きけば魯山人の徳利や燗熱く
真白な大壺を据ゑて松の内
寒月のその半月や暁天に
一月八日長崎
グラバーが碧眼瞠る寒の潮
絨毯の麒麟紋様グラバー邸
灯してなほ暗かりき冬館
ひえびえと開く出島の襖かな
出島見て一力に来て句座始
初東風や案内されたる巴の間
餅小さく玉のごときが吸物に
人日の太白の嗚呼あかあかと