四月号
   嗚呼         辻 桃子

豆甘く(なます)酸つぱく千代の春
氷めくなますの氷頭(ひづ)のこりこりと
お雑煮やみちのくのものたつぷりと

        津軽では
供へしは葉つこ実つこの飾りかな
宝船敷いて枕を叩きもし
金の財布銀の財布や買始
初買のポケット多き財布かな
長子もう少年らしく歌留多取
きけば魯山人の徳利や燗熱く
真白な大壺(たいこ)を据ゑて松の内
寒月のその半月や暁天に

        一月八日長崎
グラバーが碧眼(みは)る寒の潮
絨毯の麒麟(きりん)紋様グラバー邸
灯してなほ暗かりき冬館
ひえびえと開く出島の襖かな
出島見て一力に来て句座始
初東風や案内されたる巴の間
餅小さく玉のごときが吸物に
人日の太白(たいはく)嗚呼(ああ)あかあかと

  
  










        一月十三日「童子」事務局新年会
黒塗のお重も椀も小正月

        一月十五日自宅にて骨折、手術、入院十日、全治六ヶ月
大寒や右手左手ポキと折れ
寒暁を生きてゐたるとまた眠り
雪富士に骨折の日々はじまりぬ

        医師(イハ)
大寒や恐怖ハ回復ナル(アカシ)
青あざの紫いろに日脚のぶ
包帯に巻かれてゐたる寒の果

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